ランサーズのCMOになったつもりでマーケティングを考えてみた【マーケティングトレース】
みなさんこんにちは。トビラマーケティング代表のリュウジです。
マーケターの筋トレ書として人気の「マーケティング思考力トレーニング」。今回はこちらの書籍を参考に、お世話になっているランサーズを分析してみます!
本記事の最終目的は「自分がランサーズのCMOになったら、どんな施策が有効か考えること」そのために現状を分析し、施策を考えてみます。
ちなみにランサーズはランサーとクライアントのマッチングプラットフォームなので、双方に対する施策が必要です。ただ両方考えると思考が散ってしまうので、今回はランサー側の施策に絞って考えてみました。
- ランサーズの戦略予測
- ランサーズがどんなランサーを求めているのか
- ランサーズに対する施策提案
本記事ではこのような内容をまとめています。また本記事はあくまで私の主観に基づいた分析・見解です。その点を考慮していただいたうえで、温かい目でご覧ください。
ランサーズの基本情報
会社名 | ランサーズ株式会社 |
業界 | フリーランス・タレント・プラットフォーム事業 |
代表取締役 | 秋好 陽介 |
ビジョン・理念 | ミッション:個のエンパワーメント ビジョン:すべてのビジネスを「ランサーの力」で全身させる 誰もが自分らしく才能を発揮し、「誰かのプロ」になれる社会を作る |
売上/経常利益 | 約23億円(単体)/-3.5億円(単体)※2022年 |
従業員数 | 社員約200名 |
トレース目的 | ランサーズの方針を読み解くことで、自分の今後を考える |
ランサーズは2019年マザーズに上場。クラウドソーシング事業のトップランナーとして、多くの企業・個人が活用しています。
市場環境の分析
まずはランサーズを取り巻く市場環境を分析します。市場環境を把握することで、今ランサーズが置かれている立場・状況が把握できます。
PEST分析
PEST分析とは、そのマクロ環境を効率よく、網羅的に分析するために使用するフレームワークです。政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Social)・技術(Technology)の4つの要因から、環境の変化や影響を分析します。
政治(Politics) ・働き方改革による副業・兼業の促進(厚生労働省) ・令和5年10月1日からインボイス制度の導入(国税庁) | 経済(Economy) ・コロナウイルス流行語フリーランス人口・経済規模ともに増加(新・フリーランス実態調査) ・アメリカでは労働人口に対するフリーランス率が36%、日本では22% |
社会(Social) ・独立して成功した人がSNSでフォロワーを伸ばす ・フリーランス・副業が働く選択肢になる | 技術(Technology) ・リモートワーク環境の充実によってアウトソーシングの容易化が進む ・オンラインで学びやすい環境が充実してきた |
どの要因においても、フリーランス・副業人材を利用したアウトソーシングが推進されていることがわかります。私の実感としてもフリーランスになった6年前と比べると、かなりフリーランスという働き方が認知されていると実感しています。この動きはランサーズにとって、追い風と言えるでしょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは、自社がさらされている脅威を、業界内の競合の脅威、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力の5つに分類することで、自社の収益性を分析するフレームワークです。PEST分析ではマクロの視点で分析しましたが、ファイブフォース分析ではミクロな視点で分析をしていきます。
直接競合の脅威 | ・クラウドワークス、ココナラ、Wantedly、Workshipなど ・ランサーズは大手 |
新規参入の脅威 | ・フリーランスが仕事を探すプラットフォームは日々増え続けている(フリーランス・副業カオスマップ) ・専門特化したサービスが次々登場しているので、特定分野で厳しい戦いを強いられる可能性あり。エンジニアはランサーズより、他のサービスを利用していそう 新規参入の脅威は高 |
代替品の脅威 | ・転職サービスが考えられる。ただし今後の社会の流れから、フリーランス化する方が多そう 代替品の脅威は低 |
買い手の交渉力 | ・買い手は仕事を発注する企業 ・多くのクラウドソーシングが誕生しており、スイッチングは容易 買い手の交渉力は高 |
売り手の交渉力 | ・売り手は仕事を受けるフリーランス ・フリーランス自体はプラットフォームを渡り歩ける。ただし評価が溜まるとランサーズのファン化して、移動はおこりにくくなる 売り手の交渉力は中 |
PEST分析でもわかるように、クラウドソーシング業界は伸びる可能性が高い市場です。そのため日々多くの企業が参入しており、新規参入の脅威は高いことがわかります。またクラウドソーシング間のスイッチングコストも低いので、乗り換えも起こりやすいでしょう。
このことからランサーズが収益を伸ばすキモになるのは、ランサーズを活用し続けてくれるロイヤル顧客(企業・フリーランスともに)をいかに作るかでしょう。継続的にランサーズにて発注・受注が起これば、収益は安定します。
ランサーズが昨年月額報酬制度を整備したのも、このあたりが要因ではないかなと思います。ランサーズを活用しているユーザーとしても、このあたりは納得の分析結果になりました。
戦略分析
PEST分析・ファイブフォース分析で市場を把握した後は、ランサーズの具体的な戦略を分析していきます。ランサーズの強みは何なのか、マーケティング視点で見ていきましょう。
3C分析
3C分析とは、自社、競合、顧客のそれぞれをリサーチし、戦略を考えるフレームワークです。3C分析の詳しい内容は、以下の通り。
- 顧客・市場(Customer)…どんな人が顧客なのか。顧客のニーズ
- 競合(Competitor)…競合他社との現在の状況
- 自社(Company)…自社の強み・弱み
それではこれをランサーズに当てはめると、どのようになるのでしょうか。ランサーズのIR情報と、競合分析から以下のように分析します。
顧客・市場 (Customer) | ・仕事を探しているフリーランス・副業人材 ・フリーランス・副業人材に仕事を依頼したい企業 →プラットフォーム事業なので、売り手・買い手双方のマッチングが必要。それぞれ開拓しなければならない |
競合 (Competitor) | ・総合系クラウドソーシング。タスク発注が中心 ・専門特化型エージェント。エンジニアを中心に高単価案件をそろえる会社が多い。プロフェッショナルが登録する →ランサーズは初心者案件から、プロレベルの案件まで幅広い。初心者を育ててそのままランサーズを使ってくれれば、プロレベルの案件も受けられる。 |
自社 (Company) | ・ランサー1人あたりの受注金額が他社の約2.5倍。他クラウドソーシングに比べてスキルの高いフリーランスが在籍している ・クラウドソーシングと言えばクラウドワークスとランサーズの2強。企業側がクラウドソーシングを使う際、選択肢に上がる |
3C分析1番の気づきとしては、ランサーズに在籍しているランサーのスキル・受注金額も高い点。これは顔写真・本名出しのランサーを優先して検索上位に表示させるなど、いいランサーに仕事をとってもらおうとする姿勢につながります。
また専門特化エージェントと異なり、初心者でも挑戦できる案件が多い点も特徴です。私自身もそうなのですが、スキルのないところからランサーズを使いはじめ、プロフェッショナル人材に育つ人が何人もいます。このように初心者からプロレベルの案件まで、幅広く受注できるのが強みの1つなのかなと思います。
ランサーズは毎年開催されるランサーオブザイヤーや、新しい働き方LABなど、ランサーに向けた施策が多い点も、ランサーの教育に力を入れていることがわかります。
「ランサーズで育ってプロレベルの人材になる」これがランサーズの目指しているところではないでしょうか。
ランサーズが市場で成功した要因
ここまでの分析から、ランサーズが市場で成功した要因をまとめると「スキルの高いランサーが多く在籍していること」につきるかなと思いました。ランサーズは「スキルの高いランサーがいる=単価の高い仕事が受注できる=流通金額が増える」という循環を、意図的に作っています。
私自身今ではスキルの高いランサーに分類されますが、これはランサーズのサポートなしではあり得ません。大型案件では社員さんがサポートに入ってくれ、新しい働き方LABなどランサーのメンタル面をサポートするコミュニティもあります。この手厚さこそが、ランサーズ成功の要因なんじゃないかなと思います。そして今後は社員さんがしていたサポートを、スキルの高いランサーが担うような流れを感じています。
自分がランサーズCMOだったらどんな施策を打つか
これらを踏まえて、自分がランサーズのCMO(最高マーケティング責任者)だとしたら、ランサー向けにどんな施策を打つのか考えてみました。
主婦向けコミュニティを作る
現在では私自身仕事をお願いする機会が増えてきました。色々な方に仕事をお願いしてきたのですが、スキルが高く信頼できる方って主婦が圧倒的に多いんですよね。話を聞いていると「出産でキャリアを一旦ストップしたけど、子育てが落ち着いたから再度働き始めた。とはいえフルタイムで働くと家庭が心配なので、自宅でできるフリーランスを目指した」こんな方が多いです。
こういう主婦の方って社会人スキルも高いですし、専門スキルもコツコツ勉強されています。なのでランサーのスキルを高めるという視点で、1番力を入れるべきなのか主婦の方々の育成なんじゃないかなと思いました。
こうした考えの元、主婦向けコミュニティを作ることで、主婦の方々がより働きやすい環境を作ります。私が担当していたランサーズブートキャンプでも、主婦の方々は横のつながりができると、より一層楽しく働いている印象があります。主婦向けコミュニティを作り、お互いに切磋琢磨することで、スキルの高いランサーを作るという提案です。
ディレクターの育成
ランサーズではスキルを高めたランサーが、ディレクター(取りまとめ役)になることがあります。私もディレクター役をやることが増えたのですが、ディレクターのスキルってこれまで勉強してきたスキルとは少し異なるんですよね。そして世間的にもあまりシェアされていない。
個人的にはディレクタースキルが高いのってランサーズ社員の方々だと思うので、ディレクタースキルを教えてもらう機会作ってほしいなと思います。他にはディレクター同士がスキルをシェアできる簡単なコミュニティを作るとか。
いいディレクターを増やすことはランサーズの利益に直結するので、ディレクター育成に関する施策は実施したいと思いました。
ランサー表彰機会を増やす
現状のランサーズではランサーオブザイヤーという年に1度の表彰機会があります。私もありがたいことに2022年に表彰していただきました。他にも新しい働き方LAB研究員プログラムでは、期が終わるときに表彰の機会があります。でもランサーオブザイヤーは年6人、研究員プログラムも研究員参加者のみが対象なんですよね。
これは私の実感なのですが、フリーランスってなかなか認められることがないんですよ。友人や家族からもやっていることなかなか理解されないし、不動産の審査に落ちて凹むこともありました。
だからこそランサーオブザイヤーで表彰されたとき、本当にうれしかったんですよね。「あぁ今までフリーランス頑張ってきてよかった」本心からそう思いました。こうした経験から、もっとランサーを表彰する機会作ったほうが、ランサーのモチベーション上がるのにと思います。
ランサーオブザイヤーほど派手でなくていいので、四半期に1回くらいランサーさん5名ほど表彰する機会増やせないかなと思いました。以前社内総会でランサーさんを表彰している場面を見ましたが、それってあくまで社内向けなんですよね。
そうではなく他のランサーさんにも公開して、みんなの前で表彰されることが大切なんです。四半期の表彰はオンラインでやれば、リソースも少なく済むかなと思います。それを見ているランサーのモチベーションにもなるので、表彰機会はぜひ増やしてほしいなと思います。
ランサーズをマーケティングトレースしてみて
今回お世話になっているランサーズをマーケティングトレースしてみたのですが、個人的にもめちゃくちゃ発見があり楽しかったです!そして何よりランサーズがミッション・ビジョンに基づいて、さまざまな施策をしている点に気づけたことで、改めてランサーズの良さがわかりました。私自身今後もランサーズを使っていきますし、何かあったら気軽に声かけてほしいなと思います。
そしてこのマーケティングトレース、マーケターとしての力を鍛えるのに本当素晴らしいですね。今後不定期でいろいろな企業を分析してみたいと思いました。
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