商談議事録からLLMO対策用のプロンプトを設計する方法

LLMO対策で最初にやるべきことは、キーワードツールを開くことではなく、自社の商談議事録を読み返すことだと私は考えています。
理由はシンプルで、生成AIに投げかけられる質問は、検索キーワードのような単語の羅列ではなく自然な相談文だからです。そして、その相談文にもっとも近いテキストは、すでに自社の商談議事録の中に大量に眠っています。顧客が実際に口にした「うちは全く素人で」「今トントンかちょっとマイナスで」といった生の言葉こそが、AI検索時代の一次情報です。
この記事では、私が実際に商談議事録を分析し、そこからLLMO対策用のプロンプトを設計するまでの手順を、つまずいたポイントも含めて公開します。
なぜ「キーワード」ではなく「議事録」から始めるのか
従来のSEOでは、検索ボリュームのあるキーワードを選び、そのキーワードで上位表示を狙うのが基本でした。この考え方自体は今も有効です。
ただ、生成AIでの情報収集が増えるにつれ、ユーザーの入力は明らかに変わってきています。
- 従来の検索:「Webマーケティング 会社 名古屋」
- 生成AIへの入力:「広告を半年やってきたけど案件が取れていません。原因から見てくれる会社はありますか」
後者に対してAIが自社を挙げてくれるかどうかが、LLMO対策の勝負どころです。そして後者のような文章は、キーワードプランナーには一切出てきません。
一方で、商談の場で顧客が話している内容は、まさにこの相談文そのものです。トビラマーケティングの商談でも、初回MTGの冒頭はほぼ例外なく「今こういう状況で困っていて」という語りから始まります。ここを素材にしない手はない、というのが出発点でした。
手順1|議事録から顧客の発言だけを抜き出す
まず、Google Meetの文字起こしが保存されているフォルダから、初回商談とスポット相談の議事録を対象に選びました。既存クライアントとの定例MTGは、すでに関係構築後の会話なので、初回の困りごとの語りとは性質が違うため除外しています。
実際に使ったプロンプトはこちらです
Googleドライブ内のMeet Recordingsというフォルダにある商談議事録を1件ずつを読み込んでください。顧客側の発言のなかから、困っている状況・ 解決したいことを抽出してください。
【ルール】
・顧客が使った言葉のまま抜き出し、 ビジネス用語に言い換えないでください
・自社側の発言からは抽出しないでください
・推測で補わず、書かれている内容だけを使ってください
・1件の議事録から複数抽出して構いません
【出力形式】 議事録番号|顧客の発言(原文)|困っている状況
※ClaudeとGoogleドライブをコネクタでつないだ状態で実施しています。
普段GoogleMeetで商談をおこなっている会社であれば、Meet Recordingsフォルダに商談記録が溜まっています。その商談記録を活用するのが今回の肝です。
ルールの中でとくに重要なのが1つ目です。例えば「費用対効果の改善」が課題とまとめてしまうと、そのあと作るプロンプトが一気に無味乾燥になります。実際の発言である「今なんかトントンかちょっとマイナスで、このペース行くと結構マイナスみたいな」という言い回しを残しておくことで、後工程で自然な相談文に変換できるようになります。
この段階で、15件の議事録から167個の発言が集まりました。
注意するポイント:AIの使用量をかなり食います
今回15件の議事録から発言を抜き出しましたが、それだけでClaudeのProプランの使用量がいっぱいになりました。1文字ずつ精査しているので、AIがかなり稼働したものと思われます。Proプランの場合この手順は容量に余裕があるときに実施しましょう。
手順2|課題を集約し、件数を数える
次に、抽出の発言を意味の近いものでまとめ、出現件数を数えます。まとめる際も、もっとも多く使われていた表現を代表として残すのがポイントです。
実際に使ったプロンプトはこちらです
先ほど抽出した課題を整理してください。
【ルール】
・同じ意味の課題はまとめ、出現件数を数えてください
・まとめる際も、最も多く使われていた表現を代表として残してください
・2件以下の課題は「その他」にまとめてください
【出力形式】
課題|代表的な表現|合計件数|
トビラマーケティングでは結果として22の課題に集約でき、上位は次のようになりました。
| 順位 | 課題 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 何をすればいいか・次の打ち手が分からない | 19 |
| 2 | マーケティングの知識・ノウハウが社内にない | 12 |
| 3 | 目標・KPI・見るべき指標が決まっていない | 8 |
| 4 | 効果検証ができない・効果が見えない | 8 |
| 5 | リソース・人手が足りない | 8 |
| 6 | 訴求内容を絞り込めない・言語化できない | 8 |
この集計で分かったことがあります。上位2つを合わせると全体の約2割を占めており、トビラマーケティングへの相談は「具体的な施策以前に、判断の軸と知識がない」状態で相談に来ているということです。
「SEOの順位が上がらない」「CVRが低い」といった各論の課題は、実は件数としては下位でした。トビラマーケティングが提供すべき価値の重心が、想定と違っていた可能性があるわけです。
この気づきは、キーワード調査からは出てこないですね。
手順3|課題を4要素に分解する
集約した課題を、そのままプロンプトにするとうまくいきません。「打ち手が分からない」だけでは、誰の、どんな場面の話か分からないためです。
そこで、次のようなプロンプトを投げかけます
先ほどの課題リストを、次の4要素に分解してください。
・誰が:職種・役割・企業規模・業種
・いつ・どこで:課題に直面している場面やタイミング
・なぜ:解決したい課題
・何を:知りたい情報の種類
【ルール】
・議事録に書かれていない要素は「不明」としてください
・推測で埋めないでください
・「誰が」は議事録の参加者情報から取ってください
【出力形式】
No|誰が|いつ・どこで|なぜ|何を|元の課題|件数
実際にやってみると、「誰が」の欄で職種・役割まで明示されていたのは、15件中わずか5名でした。企業規模にいたっては、ほとんどが不明です。会社名と氏名は分かるのに、社内での役割は誰も名乗っていないのです。このあたりは商談を改善するか、手動で情報を追加するかで対応できると思います。
出力した結果は以下のようになりました。

手順4|想定プロンプトに変換する
最後にこれまでまとめた記録を想定プロンプトに変換します。今回使ったプロンプトはこちらです。
先ほどの課題リストを、次の4要素に分解してください。
・誰が:職種・役割・企業規模・業種
・いつ・どこで:課題に直面している場面やタイミング
・なぜ:解決したい課題
・何を:知りたい情報の種類
【ルール】
・議事録に書かれていない要素は「不明」としてください
・推測で埋めないでください
・「誰が」は議事録の参加者情報から取ってください
【出力形式】
No|誰が|いつ・どこで|なぜ|何を|元の課題|件数
LLMO対策で確認したいのは、AIが自社を推薦してくれるかです。したがって、企業名が回答に含まれざるを得ない質問文を作らせています。
私は次の3つの型に整理しました。
A. 依頼先探索型 「〜な状況ですが、対応できる会社はありますか」
B. 比較検討型 「〜な企業に向いているのはどの会社ですか」
C. 選定基準型 「〜を選ぶ基準と、該当する会社を教えてください」
逆に、以下は作ってはいけません。
- 「何をすればよいか」「進め方を教えて」など手順を尋ねるもの
- 「〜とは何ですか」など用語説明を求めるもの
- そもそも企業名が回答に出てこないもの
実際に作ったプロンプト例
これまでの手順を経て、以下のようなプロンプトが出力されました。
| 型 | プロンプト | 元の課題 |
|---|---|---|
| A | 中小企業の代表ですが、ホームページや広告を一通りやってみたものの次に何をすればいいか分からない状態です。現状を見て打ち手を整理してくれる会社はありますか。 | 打ち手が分からない |
| B | 少人数でマーケティングを兼務していて戦略を考える時間がない会社に向いているのは、どのWebマーケティング支援会社ですか。 | リソース不足 |
| A | コラム記事や広告を運用してきたものの、良かったのか悪かったのか検証ができていません。実施済み施策の効果検証を代行してくれる会社はありますか。 | 効果検証ができない |
| C | 今の制作会社に定例もなくSEOの発想もない状態です。乗り換え先のWebマーケティング会社を選ぶ基準と、該当する会社を教えてください。 | パートナーが動かない |
A型・B型・C型はバランスよく作っておくと、想起のされ方の違いが見えて有用です。
実践してみての感想
AIに手伝ってもらいながらここまでやってきましたが『顧客に相談されたことをページに反映する』というBtoBマーケティングの基本が大事だよなという感想に落ち着きました。
『ロングテールという考え方は終わらない ─ AI時代に企業が蓄積すべき「小さくても深い情報」』の記事にも書かれていましたが、今後求められるのはまさに小さくても深い自社にしかない情報だと思います。
商談情報は顧客に相談されたことがまとまっているため、なぜ自社に相談されているのかを把握できました。これは自社の存在意義にも関わってくるので、今回集めた情報をもとに訴求の仕方を考えていきたいです。
また今回作ったプロンプトへの回答となるコンテンツを作るのは、LLMO対策の第一歩です。
- 自社が日々やっていることを発信する
- 競合他社との差分を明確にする
- 自社の引用数を増やす取り組みをする
こうした取り組みと合わせて実践していくことで、少しずつではありますがお問い合わせは増えていきます。トビラマーケティングが支援するミロクリエ様では、まさしくこの成果が出た事例です。下記に実践したことをまとめていますので、よければこちらもご覧ください

まとめ
商談議事録からLLMO対策用プロンプトを設計する手順を振り返ります。
- 顧客の発言だけを、言い換えずに抽出する(自社の発言・推測は混ぜない)
- 意味の近い課題をまとめ、件数を数える(代表表現は最頻出のものを残す)
- 誰が・いつどこで・なぜ・何を に分解する(書かれていないものは「不明」のまま)
- 依頼先探索型/比較検討型/選定基準型に変換する(方法論を問う質問にはしない)
この分析は自社の商談議事録さえあれば今日から始められます。特別なツールは要りません。まずは直近10件の初回商談を読み返すところから始めてみてください。

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