リンクアンドモチベーションのCMOになったつもりでマーケティング戦略を考えてみた【マーケティングトレース】
みなさんこんにちは。トビラマーケティング代表のリュウジです。
マーケターの筋トレ書として人気の「マーケティング思考力トレーニング」。今回は組織開発コンサルのトップランナーであるリンクアンドモチベーションを分析してみます。
本記事の最終目的は「自分がリンクアンドモチベーションのCMOになったら、どんなマーケティング戦略が有効か考えること」そのために現状を分析し、施策を考えてみます。
ちなみにリンクアンドモチベーションは、以下のDivisionに分かれています。
- 組織開発Division
- 個人開発Division
- マッチングDivision
今回はその中から組織開発Divisionのマーケティング戦略について考えてみました。なので正確に言うと「リンクアンドモチベーション組織開発Divisionのマーケティング責任者になったつもりで、マーケティング戦略を考えてみた」ですね。
- リンクアンドモチベーションの市場分析
- リンクアンドモチベーションの強みと他社との差別化ポイント
- リンクアンドモチベーションに対するマーケティング施策提案
本記事ではこのような内容をまとめています。また本記事はあくまで私の主観に基づいた分析・見解です。その点を考慮していただいたうえで、温かい目でご覧ください。コンサル会社のビジネスモデル・マーケティング戦略で役立つことがあると思います。
リンクアンドモチベーションの基本情報
会社名 | リンクアンドモチベーショングループ 組織開発Division |
業界 | 組織開発 |
代表取締役 | 小笹 芳央 |
ビジョン・理念 | 私たちは モチベーションエンジニアリングによって 組織と個人に変革の機会を提供し 意味のあふれる社会を実現する |
売上/営業利益利益(2023年12月期) | 128億円/90億円 |
従業員数 | 622人 |
トレース目的 | コンサル業界の勝ち筋を見つける |
リンクアンドモチベーションと言えば、モチベーションエンジニアリングという言葉を日本で最初に使い始めた会社。今でもモチベーションエンジニアリングを会社の基盤技術として宣言しています。このモチベーションエンジニアリングという言葉、とてもキャッチ―だし企業の課題にもマッチしています。このコンセプト・キャッチコピーを作ったことで、市場への道筋が開けたんじゃないかと思います。
市場環境分析
まずはリンクアンドモチベーションを取り巻く市場環境を分析します。市場環境を把握することで、今リンクアンドモチベーションが置かれている立場・状況を把握します。
PEST分析
PEST分析とは、そのマクロ環境を効率よく、網羅的に分析するために使用するフレームワークです。政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Social)・技術(Technology)の4つの要因から、環境の変化や影響を分析します。
政治(Politics) 労働時間の上限規制、有給休暇の計画的取得など、労働時間に関する規制が厳しくなる。働き方改革の推進で、働きやすい組織を作るための組織開発が必要になる | 経済(Economy) インフレの進行により企業コストが増加し、組織開発に対する投資が減少する可能性。解雇へのハードルが高い日本では、組織開発プログラムを充実させる機会が増える |
社会(Social) 少子高齢化によって労働市場がひっ迫しており、限られた人材を有効活用するため組織開発が必要。非正規雇用・フリーランス活用を推進する企業が増えており、組織開発のあり方が大きく変わる可能性がある | 技術(Technology) リモートワークの台頭により新たな組織開発アプローチが必要になるeラーニング、AIによるパーソナル学習など、革新的な技術の登場 |
- 政治・社会の動向から、組織開発ニーズは上昇している
- 今後社会・技術が大きく変わる可能性があるので、組織開発のニーズも上昇する可能性が高い
- リモートワーク・フリーランス活用など、組織開発のあり方自体が大きく変わる可能性がある
解雇のハードルが高い日本では、必然的に組織開発のニーズが高くなります。リモートワーク・フリーランス活用などで組織のあり方が変わる可能性はありますが、根幹の部分はしばらくの間は変わらないと思います。
全体としてみると組織開発のニーズは上昇が見込めそうで、リンクアンドモチベーションの市場も拡大していくと予想されます。
5Force分析
5Force分析とは、自社がさらされている脅威を、業界内の競合の脅威、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力の5つに分類することで、自社の収益性を分析するフレームワークです。PEST分析ではマクロの視点で分析しましたが、ファイブフォース分析ではミクロな視点で分析をしていきます。
新規参入の脅威 | ・専門知識の取得、信頼性の構築など参入障壁は高い |
代替品の脅威 | ・オンラインプラットフォーム(Udemyなど)、書籍などが代替品 ・ただし実践が必要な領域なので、完全な代替品にはなり得ない |
直接競合の脅威 | ・リクルートマネジメントソリューションズ、デロイトトーマツなど ・主要プレイヤーが市場シェアを占めている |
買い手の交渉力 | ・組織開発コンサルティング会社は複数あるので、比較検討による交渉力がある |
売り手の交渉力 | ・売り手=市場にいるコンサルティング人材。高度人材は貴重 ・企業の購買決定要因は人材よりブランドによりそうなので、交渉力はあまり強くない |
- 代替品はあるが、完全な代替品にはなり得ない
- 企業としての信頼性が新規参入のハードルを高めている。1から組織開発コンサルをしようとしても、大手企業相手だとなかなかもぐりこめなさそう
戦略分析
PEST分析・ファイブフォース分析で市場を把握した後は、リンクアンドモチベーションの具体的な戦略を分析していきます。リンクアンドモチベーションの強みは何なのか、他社との違いは何なのか、マーケティング視点で見ていきましょう。
3C分析
3C分析とは、自社、競合、顧客のそれぞれをリサーチし、戦略を考えるフレームワークです。3C分析の詳しい内容は、以下の通り。
- 顧客・市場(Customer):どんな人が顧客なのか。顧客のニーズ
- 競合(Competitor):競合他社と現在の状況
- 自社(Company):自社の強み・弱み
これをリンクアンドモチベーションに当てはめると、以下のようになります
顧客・市場 (Customer) | ・コンサル・クラウド事業の支援者数は国内1,500社程度。従業員50名以上の会社は100,000万社あるので売り上げ拡大の余地はある ・クラウドの価格は従業員数によって変化。大型案件になると月数百万円規模になる ・大手企業を中心に営業をしている |
競合 (Competitor) | ・リクルートマネジメントソリューション・デロイトトーマツなどの外資系が大手企業狙いで競合。クラウドが順調なこともありシェアは1番とっている ・中小企業狙いだと船井総研が強い。業種別セミナーなど多数 |
自社 (Company) | ・モチベーションエンジニアリングによる人的資本コンサルの第一人者 ・コンサルとモチベーションクラウドの2本柱。ガッツリ現場に入るタイプと、ある程度企業に任せてポイントで入るタイプ |
3C分析の気づきとしては、ビジネスモデルをコンサルとクラウドの2本柱にしていること。主に大手企業をターゲットにした伴走型コンサルと、中小企業をターゲットにしたSaaS型クラウド。企業規模によって予算が決まる、2つの商品を用意して、売上拡大を実現しています。
また業界のトップランナーである点はやはり強力。リクルートマネジメントソリューション・デロイトトーマツといった知名度の高い大手とも渡り合えるのは、これまでの実績の積み重ねが強そうです。
自分がリンクアンドモチベーションCMOならどんな施策を打つか
これらの分析を踏まえて、自分がリンクアンドモチベーションCMOならどんな施策を打つか考えてみました。
- ホワイトペーパー導線の修正
- 業種別ウェビナーの実施
- コンサル事例の追加
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホワイトペーパー導線の修正
リンクアンドモチベーションは人事向けメディアやコラム記事など、多数の記事コンテンツを有しています。またホワイトペーパーも多数あり、Webマーケティングに力を入れているのがわかります。
ただ記事コンテンツを見たところ、ホワイトペーパーへの導線が弱いのが気になりました。せっかくいいホワイトペーパーがたくさんあるのに、導線が弱いことでリードを逃している可能性が高いと思います。
- 記事事に最適なホワイトペーパーをフローティングで表示させる
- 記事内にもホワイトペーパー導線を作る
- ホワイトペーパーのバナーをもっと目立つものにする
ホワイトペーパー周りを修正するだけでも、リード数はかなり増えると思います。
業種別ウェビナーの実施
リンクアンドモチベーションは、定期的にウェビナーを実施しています。またホームページ内には動画コンテンツも用意されていて、幅広くウェビナー・動画を活用していることがわかります。
個人的にはもっと成約に近いウェビナーをやってもいいかなと思いまして、具体的には業種別ウェビナーを実施するのがいいかなと思いました。
- 建築業界の組織開発
- 保険業界のマネージャー向けウェビナー
など業界を絞ったウェビナーは成約率が高くなります。
コンサル事例の追加
リンクアンドモチベーションのサービス『モチベーションクラウド』のページには、多数の導入事例コンテンツがあります。一方でコンサルサービスの方のページには、導入事例やお客様の声コンテンツがありませんでした。
事例・お客様コンテンツは、BtoBにおいて最重要コンテンツです。事例コンテンツを作る体制はあると思うので、コンサルサービスの方も事例を追加していきたいですね。
リンクアンドモチベーションをマーケティングトレースしてみて
今回コンサル業界のリンクアンドモチベーションをトレースしてみて、とても多くの気づきがありました。中でもコンサルとクラウドそれぞれのターゲットを明確にして、広い市場にアプローチしている点は、他のコンサル会社が参考になる点も多いのではないでしょうか。
私のところにはコンサル会社からの相談も多いので、ぜひ今後に活用していきたいと思います。
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