「こんな課題、解決できる?」から始まる問い合わせ|AIが変えるBtoBの顧客獲得

私のクライアントさんに、設備保全システムを取り扱っている企業があります。5年前であれば「設備保全システム 比較」や「設備保全システム おすすめ」という製品カテゴリーのキーワードを軸に、顧客獲得方法を考えていました。
しかしここ数カ月AIが広がったことにより、とある変化が起きました。それが「設備保全システム」という製品カテゴリー名のキーワードを知らない顧客からのお問い合わせです。これは特定の業界に限った話ではなく、専門用語で語られる商材ほど起きやすい、業種を問わない変化です。
この記事では、設備保全システム提供企業で実際に起きた出来事を入り口に、次の三点をお伝えします。
- なぜ、カテゴリー名を知らない顧客が問い合わせてくるのか
- AIはそもそも、何を根拠に製品を選んでいるのか
- BtoBマーケティング担当者として、明日から何を見直すべきか
これまでのキーワード検索を前提とした集客・情報発信のあり方を、あらためて見直すタイミングとして考えてみたいと思います
きっかけはカテゴリー名を知らない顧客からのお問い合わせ
きっかけとなったお問い合わせをしたお客様がとった行動は、次のようなものでした。
- AIに対して「こんな課題を解決できるシステムはある?」と、自社の困りごとをそのまま問いかけた
- AIは、修理や点検といった業務の文脈からミロクルカルテのシステムを紹介した
- その結果、お客様はカテゴリー名を知らないまま、自社の課題に合ったシステムへたどり着いた
つまり探している製品のカテゴリーからではなく、抱えている課題からお問い合わせが生まれたのです。これは、キーワードを中心に考える従来のSEOでは起こりにくかったことでした。
そして重要なのは、これが設備保全システムという特定領域に限った話ではない、という点です。専門用語で語られ、現場の課題が先に立つBtoB商材ほど、同じ変化が起きやすいと考えられます。
AI時代に起こっている顧客の変化
従来のキーワード検索では、ユーザーはまず適切な検索語を自分で用意する必要がありました。「保全管理システム」という言葉を知らなければ、そもそもその言葉で検索することはできません。
結果として、製品カテゴリーの名称を知らない潜在顧客は、優れたシステムが存在していても、それにたどり着けないまま終わっていました。
一方、AIに対しては、ユーザーは自分の言葉で困りごとをそのまま伝えられます。そしてAIはその課題を解釈し、適切なカテゴリーや製品に橋渡しをしてくれます。
言い換えれば、ユーザーと解決策の間にあった「正しい検索語を知っているか」という壁を、AIが肩代わりして越えてくれるようになりました。
AIは何を根拠に製品を推薦しているのか
では、AIはその橋渡しの際、何を根拠に特定の製品を推薦しているのでしょうか。
正直に言うと、この点についてはまだ確かなことはわかっていません。
そのうえで、今回の事例から一つの仮説として考えられるのは、次のような情報が参照されている可能性です。
- 製品の公式サイト(特に、解決できる課題や導入事例が書かれたページ)
- 第三者による比較・解説記事やレビュー
- 業界メディアや導入企業の声といった情報
こうした情報源は、AIが引用しているのではないか、と推測される候補にすぎません。断定できる段階ではありませんが、少なくとも「どんな課題を、どう解決できるか」がわかりやすく書かれた情報・事例は、人にとってもAIにとっても重要だと考えられます。
これまでのSEOと今後の取り組み
これまでキーワードに対して良質なコンテンツを作ることが、SEO対策として語られてきました。今回の事例を踏まえて、今後はより範囲を広げた対策が必要になると感じています。
- これまで:検索エンジンと、その先にいるキーワードを知っている人に向けて発信する
- これから:それに加えて、AIとその先にいる課題を抱えている人に向けて発信する
キーワード対策を捨てる必要はありません。これまでの延長線上に課題の言葉で語る・解決事例を厚くするという要素を積み増していく。SEOとAI対策は対立するものではなく、地続きの取り組みだと捉えるのが実態に近いと思います。
今後のマーケティングで意識したいこと
この変化は、マーケティング手法・情報発信のあり方にも影響します。ポイントは次の四点です。
- 課題解決の言葉で発信する:自社製品のカテゴリー名や専門用語だけでなく、顧客が実際に抱える困りごとの言葉(例:「修理履歴を管理しきれない」「点検の抜け漏れを防ぎたい」)を、コンテンツの中で丁寧に語る
- どんな課題を解決できたか解決事例を掲載する:AIが顧客の課題と自社製品を結びつけられるよう、解決できた事例を具体的に、わかりやすく示す
- 正式名称を知らない層を見込み客として捉え直す:カテゴリー名で検索してこない人たちは、もはや圏外の顧客ではありません。課題を持つすべての人が、潜在的な出会いの相手になる。
- 営業の見直し:かつてはカテゴリー名を認知した顧客からの問い合わせでしたが、今後は多種多様な顧客からの問い合わせが想定されます。問い合わせに対する営業トークを見直し、「このパターンのお問い合わせならA」「このパターンのお問い合わせならB」のように、顧客に合わせたトーク内容や資料を整理することで、成約率が高まります。
まとめ
AI検索の広がりによって、顧客との出会い方はキーワードを知っている人に届くから課題を抱えている人に届くへと変わりつつあります。
AIが何を根拠に製品を選んでいるのか、その仕組みはまだ手探りの段階です。だからこそ、奇をてらった施策に飛びつくのではなく、「顧客の課題を起点に、わかりやすく発信する」という王道に立ち返ることが、遠回りのようでいて確かな備えになると思います。。これは人にとってもAIにとっても理解しやすい情報であり、これまでのSEO資産とも地続きの取り組みです。
まずは、自社のコンテンツが顧客の課題を解決できることを発信しているか、それを見直してみましょう。

コメント