AIが進化した時代にマーケターはどんな役割を担うのか

「Deep Researchめちゃくちゃ精度の高い情報収集してくれる」となったのが10カ月前、「Nano Bananaで作れる画像すげぇ」となったのがほんの1か月前。2025年私も本格的にAIを業務の中に組み込んでいきました。Deep ResearchとNano Bananaの進化からAIのできる幅が一気に広がった感覚があり「これはAIが広く使われるのも、そう遠くない未来になりそうだ」とも感じます。実際AIを触っている方は、そう思う方も多いのではないでしょうか。
AIの進化に日々驚く中同時に「これだけAIが進化したら、マーケターはいらなくなるんじゃないか」という恐怖感も感じます。そこで今回は私個人が考える『AIが進化した時代に、マーケターはどんな役割を担うのか』を書いてみたいと思います。2025年の締めによければご一読ください。
AIの進化
まずはここ数年AIがどのように進化をしたのか、簡単にまとめていきたいと思います。
調べるAIから使えるAIへの進化

2025年はAIの進化がすさまじい1年でした。大きな変化としては「調べるAIから使えるAI」にAIが進化したことだと思います。
以前は「GTMの設定どうすればよかったっけ」「マーケティング戦略のリサーチをやってもらおう」という感じで、Google検索より使いやすいツールとしてAIを使っていました。しかし今は「ブログのアイキャッチ画像作って」「LPのコード書いて」「マーケティング戦略考えて」など実務で使えるレベルのアウトプットを、AIが出してくれます。
この進化は確実にAIが一歩前に進んだと思います。実際XにはNono Bananaで作った画像がたくさんありますし、クライアントさんともAIの利用について話す機会が多くなりました。今後AIを使う機会は、どんどん増えていくでしょう。
キャズムを超える未来はそう遠くない

キャズム理論とは、新たな製品が世に出た際に、その製品が市場に普及するために超える必要のある溝について説いた理論のことです。具体的にいうと、イノベーター理論におけるイノベーター・アーリーアダプターを「初期市場」、アーリーマジョリティからラガードまでを「メインストリーム市場」とし、これらの間にはキャズムと呼ばれる大きな溝(市場に製品を普及させる際に超えるべき障害)が存在しており、これを乗り超えることが市場を開拓するうえで重要だとする理論をさします。
出典:東大IPC『キャズム理論とは?キャズムが発生する理由、越えるための7つのポイント』
私個人の感覚ですが、ChatGPTに関しては徐々に多くの人々に浸透しつつありアーリーアダプターも使い始めたかな、Gemini・Gensparkなどはまだイノベーターが使っている段階だと思います。しかしAIがこれだけ便利になると、実務で使われる機会が増え、アーリーマジョリティ以降の層の目に触れる機会もどんどん増えていきます。そうなるとキャズムを超えて、市場が一気に拡大する未来もそう遠くないと思います。
AIの情報ギャップはすぐになくなる
私自身今AIを使っていて「AIでこんな画像作れるんですよ」「LPも簡単に作ってくれます」とクライアントさんと話すと、驚く方が多いです。この情報ギャップは価値になるのですが、先述のように多くの人がAIを使う未来はすぐに訪れます。そうなるとAIを使えるというだけでは、価値が生み出せなくなります。
マーケターとしては「AIをフル活用しつつ、会社の売上を伸ばす方法」を提案することが求められます。
AIが進化した時代のマーケターの役割
私はAIが進化した時代でも、マーケターの大枠の役割はあまり変化しないと考えています。
- 市場・顧客のニーズを把握する(Customer)
- 競合との差別化をする(Competitor)
- 自社の強みを明確にする(Company)
いわゆる3C分析ですね。3C分析を実施してマーケティング実務に落とし込む、そしてその中でAIを活用する。AIの進化によって、より効率的かつクオリティの高い3C分析ができるようになりました。ここからはAIが進化した時代のマーケターの役割について、より具体的に考えてみます。
顧客のリアルなニーズ・心理を捉える
AIの進化により、顧客との会話を記録し整理するハードルが一気に下がりました。私が実践しているのは、以下の流れです。
- MTGはGoogleMeetで実施する。Geminiの文字起こし機能を使って会話記録をすべて残す
- NoteBookLMに会話記録を分析させる。特にMTG中に顧客が話したニーズや心理を抽出する
- 顧客ニーズを解決するコンテンツを作る。(MTG中に解決する話をしていたら、コンテンツ制作がかなり楽)
従来までだと記録を残すこと自体が大変でしたが、今は記録を残すだけでなく分析・コンテンツ化までサポートしてくれます。つまりMTGでいい会話ができれば、自然と顧客分析につながります。このように顧客や見込み顧客との対話機会を増やし、顧客のよりリアルなニーズ・心理を捉えることは、これまでもこれからもマーケターの重要な仕事です。AIをうまく活用すれば、より精度の高い顧客ニーズ・心理が把握できるようになるでしょう。
競合との差分を打ち出す
GeminiのNano bananaやCanvasによって、画像・LP制作のハードルが一気に下がりました。今後予想できるのは、AIを使ったコンテンツ・ホームページの乱立です。しかしただAIを使って画像やLPを作っても、それを活用できるかはまた別の話。AIで作ったコンテンツが当たり前の世の中になれば、人はそれに飽きてきます。そうなるとAIと差別化したコンテンツを作ることが、競合との差別化になります。
顧客の心理と競合の打ち出し方を見ながら、どんな訴求をすれば顧客は興味を持ってくれるのか、それを考えることがマーケターの仕事です。AIが進化した時代でも、いかに競合との差分を打ち出すかは重要な仕事になります。
自社の強みを記録して発信する
AIが作るコンテンツの質も、日々進化しています。そしてGoogleもAI Overviewを実装し、一般的な答えはAIが答えてくれる時代になりました。そのため「AIを使って大量のコンテンツを作れる」というのは、筋の悪い施策です。AIが進化した時代だからこそ「AIの力を借りて自社独自の強みを記録して発信する」ことが、今後生き残るためには重要だと考えています。
先述のようにGeminiの文字起こし機能などを使って、自社の記録を残していきます。その中から自社にしか発信できないオリジナリティを発揮した企業こそ、今後生き残っていくでしょう。
このように「顧客の声を聞いて、競合を分析し、自社の強みを発信する」このマーケター役割は、AIが進化しても続くと思います。AIがどんどん進化する時代でも、この本質は忘れないようにしたいですね。
余談:人の心を動かすコンテンツは残り続ける
ここからは完全に余談です。12月24日25日に2夜連続SASUKEが放映されました。この時代に2日間合計8時間放送されていたのですが、SASUKEファンの私は最初から最後まで視聴しました。このとき思ったのは「人の心を動かすコンテンツ」って不変だなということ。
SASUKEでもAIを使ったコース分析なんかはできると思いますが、スタート地点に立ったら自分の肉体とSASUKEセットの勝負。何十年も続いている番組ですが、今なお根強い人気を誇っています。YouTubeがSASUKE人気に一役買っていることは間違いないですが、SASUKEが人気になる本質は本気で挑んでいる人たちを見て、自分の心も動かされているからだと思います。BtoCでもBtoCでもここは変わらないと思います。
AI時代に適応するマーケターになる
AIの進化によってマーケターも覚えることが増えました。AIと格闘することで、正直脳の限界を感じる日々です。しかしそれでもこの時代を生き残っていくためには、AIをうまく活用することは避けられません。本記事でも書いたように、本質的なマーケターの仕事に変化はなくても、手段はどんどん変わっていきます。変化が激しい時代でもそれに負けないよう、日々努力を続けたいと思います。

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